目次
「社員の紹介なら、コストも抑えられて良い人材が採れるはず」。そう期待してリファラル採用を導入したものの、全く紹介が集まらなかったり、期待した成果が出なかったりして、「リファラル採用は難しい」と感じている採用担当者の方は少なくありません。しかし、いくつかの重要なポイントを押さえることで、リファラル採用は強力な採用チャネルになり得ます。
本記事では、リファラル採用が失敗する根本的な原因を解き明かし、成功に導くための具体的なポイントを手順に沿って詳しく解説します。
リファラル採用が難しいと言われる5つの理由

多くの企業がリファラル採用でつまずくのには、共通した理由があります。自社の状況と照らし合わせながら、どこに課題があるのかを確認してみましょう。
社員のエンゲージメントが低く協力してもらえない
最も根本的で大きな理由が、社員の自社に対するエンゲージメント(愛着や貢献意欲)の低さです。社員が自社の理念や事業、組織文化に共感し、「この会社は素晴らしい」「友人にも勧めたい」と感じていなければ、大切な知人を紹介しようとは思わないでしょう。制度を作る以前に、社員が自社を誇りに思えるような環境づくりが不可欠です。
| 失敗理由 | 概要 | 対策の方向性 |
|---|---|---|
| 社員のエンゲージメント不足 | 社員が自社を勧めたいと思っていない | 働きがいのある環境づくり、ビジョンの浸透 |
| 求める人物像の曖昧さ | どんな人を紹介すれば良いか分からない | 採用要件を具体的に定義し、社内で共有する |
| 制度設計の不備 | 制度が複雑で利用されない | シンプルで分かりやすいルールとフローを設計する |
| 担当者の負担増 | 運用が大変で継続できない | ツール活用などで業務を効率化し、体制を整える |
| 人間関係への懸念 | 不採用時の気まずさを心配している | 紹介者と候補者への丁寧なフォロー体制を構築する |
採用したい人物像が曖昧でミスマッチが起こる
「誰か良い人いたら紹介して」といった曖昧な依頼では、社員もどんな人を紹介すれば良いのか分かりません。その結果、紹介があったとしてもスキルやカルチャーが合わず、選考の手間だけが増えてしまいます。どのようなスキルや経験、価値観を持つ人材が必要なのかを具体的に定義し、全社で共有することが重要です。
制度の設計が甘く形骸化してしまう
紹介から採用までのフローが複雑だったり、インセンティブ(報酬)の条件が不明確だったりすると、社員は「面倒くさい」「よく分からない」と感じ、協力する意欲を失ってしまいます。誰が、いつ、何をすれば良いのかが明確で、紹介するメリットが分かりやすい制度を設計しなければ、制度はあっという間に形骸化してしまいます。
採用担当者の負担が大きく継続できない
リファラル採用は、社員への制度説明、紹介者とのコミュニケーション、候補者対応、効果測定など、採用担当者の業務が増える側面もあります。これらの業務に追われ、本来注力すべき社内への働きかけや制度改善が後回しになると、活動は停滞してしまいます。担当者の負担を軽減し、継続的に運用できる体制を整えることが成功の鍵です。
不採用時の人間関係トラブルを懸念している
「紹介した友人が不採用になったら気まずい」「友人関係にヒビが入るかもしれない」という社員の懸念も、リファラル採用が進まない一因です。紹介者と候補者の関係性に配慮し、不採用の場合でも丁寧なフォローを行うなど、社員が安心して知人を紹介できるような仕組みと配慮が求められます。
リファラル採用のメリット
リファラル採用が難しい理由を見てきましたが、多くの企業が取り組むのは、それを上回る大きなメリットがあるからです。改めてその価値を確認しましょう。
採用コストを大幅に削減できる
最大のメリットは、採用コストの削減です。求人広告費や人材紹介会社への成功報酬が不要になるため、採用単価を大幅に抑えることが可能です。インセンティブを支払ったとしても、外部サービスを利用するよりはるかに低コストで採用が実現できます。
候補者の質が高く定着しやすい
社員は自社の文化や事業内容を深く理解しているため、それにマッチする人材を見極めて紹介してくれる傾向があります。候補者も、社員から社内のリアルな情報を事前に聞けるため、入社後のミスマッチが起こりにくく、結果的に定着率が高まります。
潜在的な転職希望者層にアプローチできる
転職サイトやエージェントには登録していないものの、「良い機会があれば転職したい」と考えている優秀な「転職潜在層」に直接アプローチできるのも大きな魅力です。社員の人脈を通じて、従来の採用手法では出会えなかった人材と接点を持つことができます。
リファラル採用のデメリットと注意点

多くのメリットがある一方で、リファラル採用には注意すべきデメリットも存在します。事前に理解し、対策を講じることが重要です。
人間関係への配慮が常に必要になる
紹介者と候補者の人間関係は、選考プロセスにおいて常に配慮が必要です。特に不採用の決定を下す際には、紹介者の立場を尊重し、丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。これを怠ると、社員の信頼を損ない、協力が得られなくなる可能性があります。
制度設計や継続的な運用に手間がかかる
リファラル採用は、一度制度を作って終わりではありません。社員への定期的な情報提供、紹介者とのコミュニケーション、効果測定と改善など、継続的な運用が不可欠です。これらの活動には相応の手間と時間がかかることを覚悟しておく必要があります。
似たような人材ばかり集まる可能性がある
社員は自分と似た価値観や経歴を持つ知人を紹介する傾向があるため、気付かないうちに人材の多様性が失われるリスクがあります。組織の硬直化を避けるためにも、リファラル採用だけに頼るのではなく、他の採用手法と組み合わせることが推奨されます。
リファラル採用を成功させるための7つのポイント
では、どうすればリファラル採用を成功させることができるのでしょうか。ここでは、明日から実践できる7つの具体的なポイントを解説します。
| 施策 | 目的 | 具体例 |
|---|---|---|
| 経営層からのメッセージ発信 | 全社的な重要性の認識 | 全体朝礼での呼びかけ、社内報でのトップメッセージ |
| シンプルな制度設計 | 利用のハードルを下げる | 紹介フォームの簡略化、FAQの整備 |
| 徹底した社内周知 | 制度の理解促進と協力依頼 | 説明会の実施、ポスター掲示、定期的なリマインド |
| 紹介者の負担軽減 | 協力しやすさの向上 | 候補者情報の簡単な登録フロー、人事による手厚いサポート |
| 定期的な情報発信と効果測定 | 関心の維持と制度改善 | 月次の実績共有、募集ポジションのアップデート |
| 魅力的なインセンティブ | 協力意欲の向上 | 金銭的報酬、特別休暇、食事券、表彰制度 |
| ツールの活用 | 運用の効率化 | リファラル採用支援ツールの導入、社内SNSの活用 |
ポイント1:経営層が導入の目的と本気度を示す
リファラル採用は人事部だけの取り組みではなく、全社的な活動です。経営層が自らの言葉で「なぜリファラル採用が重要なのか」という目的やビジョンを語り、成功に向けて本気でコミットする姿勢を示すことが、社員の協力を得るための第一歩となります。
ポイント2:明確で分かりやすい制度を設計する
紹介の手順、選考フロー、インセンティブの支払い条件など、制度のルールは誰が見ても理解できるように、シンプルで明確にすることが重要です。マニュアルやFAQを用意し、社員が疑問を持ったときにすぐに解決できる環境を整えましょう。
ポイント3:社内への周知と協力依頼を徹底する
制度が完成したら、全社に向けて丁寧に説明し、協力を依頼します。単に告知するだけでなく、説明会を実施したり、各部署のキーパーソンに協力を仰いだりして、リファラル採用を「自分ごと」として捉えてもらうための働きかけが不可欠です。
ポイント4:紹介者の負担を軽減する仕組みを作る
社員が通常業務の合間に協力してくれることを念頭に置き、紹介のプロセスはできるだけ簡単にするべきです。専用の紹介フォームを用意したり、紹介したい人がいたら人事に知らせるだけでOKとしたりするなど、社員の手間を最小限に抑える工夫をしましょう。
ポイント5:定期的な情報発信と効果測定を行う
現在募集中のポジション、紹介してほしい人物像、リファラル採用の実績などを社内報やチャットツールで定期的に発信し、社員の関心を維持することが大切です。また、紹介数や採用決定率などのデータを測定・分析し、継続的に制度を改善していく視点も欠かせません。
ポイント6:公平で魅力的なインセンティブを設定する
インセンティブは、社員の協力意欲を高める重要な要素です。金額だけでなく、「紹介してくれた友人との会食費用を補助する」といったユニークな非金銭的報酬も有効です。紹介時と採用決定時の二段階で報酬を設定するなど、社員が納得感を持ち、積極的に参加したくなるような設計を心がけましょう。
ポイント7:便利なツールやサービスを活用する
近年、リファラル採用の運用を効率化するための様々なツールやサービスが登場しています。これらのツールを活用することで、告知、候補者管理、効果測定といった煩雑な業務を効率化し、採用担当者がより本質的な業務に集中できるようになります。
スタートアップのリファラル採用についても知りたい方は、下記記事をご覧ください。
スタートアップこそリファラル採用を!成功に導く具体的な手順と注意点を解説|Hitorime
リファラル採用の導入・改善の具体的な手順

これからリファラル採用を導入する、あるいは既存の制度を改善するための具体的な5つのステップを紹介します。
手順1:目的とKGI・KPIを明確にする
まず、「なぜリファラル採用を行うのか」という目的を明確にします。例えば、「採用コストを20%削減する」「エンジニアの採用比率を30%にする」などです。その上で、KGI(重要目標達成指標)として「リファラル経由の年間採用決定数」、KPI(重要業績評価指標)として「月間紹介数」「選考通過率」などを設定します。
手順2:社内の協力体制を構築する
経営層や各部門の責任者を巻き込み、リファラル採用を推進するための協力体制を築きます。特に、協力的で人脈の広い社員にアンバサダーとして活動してもらうなど、現場のキーパーソンを味方につけることが成功の鍵です。
手順3:紹介制度の具体的なルールを決める
対象となる社員の範囲、紹介の方法、インセンティブの内容と支給条件、選考の進め方、不採用時の連絡方法など、具体的なルールを詳細に決定します。社員が安心して参加できるよう、公平性と透明性を担保することが重要です。
手順4:全社に周知し、理解を促進する
完成した制度を全社に告知します。キックオフイベントや説明会を開催し、制度の目的やメリット、具体的な手順を直接伝える機会を設けましょう。ポスターや社内SNSなども活用し、継続的に情報を発信します。
手順5:運用を開始し、PDCAを回す
運用を開始した後は、定期的に実績データを分析し、計画通りに進んでいるかを確認します。紹介が少ない部署にはヒアリングを行うなど、課題を発見し、改善策を実行するPDCAサイクルを回し続けることが、制度を定着させ、成果を最大化するために不可欠です。
【企業別】リファラル採用の成功事例
実際にリファラル採用を成功させている企業の事例から、具体的なヒントを学びましょう。
株式会社セールスフォース・ドットコムの事例
同社では、経営層がリファラル採用の重要性を強く発信し続け、全社的な文化として根付かせることに成功しました。紹介した社員に旅行券をプレゼントするなどの魅力的なキャンペーンを実施し、社員の参加意欲を喚起。結果として、年間採用人数の約半数がリファラル経由となるなど、大きな成果を上げています。
参考:約半数をリファラルで採用するSalesforceの成果を支える「コアバリュー採用」とは|共感採用はなぜ必要かvol.02【EventReport】-Wantedly
株式会社ビズリーチの事例
創業当初からリファラル採用を重視してきた同社では、一時期制度が形骸化した際に、有志の社員が「リクルーティングプロジェクト」を立ち上げ、主体的に改善活動を行いました。このボトムアップの動きが全社に広がり、現在では採用経路の約4割をリファラル採用が占めるまでに至っています。
参考:refcome「事業創りは仲間探し」ビズリーチ社のリファラル採用成功の秘訣
まとめ
リファラル採用を成功させることは、決して簡単ではありません。しかし、「社員が自社を好きであること」を土台とし、目的を明確にした上で、分かりやすく参加しやすい制度を設計し、全社を巻き込みながら継続的に運用していくことで、必ず成果に繋がります。
本記事で紹介したポイントや手順を参考に、ぜひ自社のリファラル採用を見直し、より良い採用活動を実現してください。
1人目採用なら「Hitorime」
スタートアップ採用で1人目人材を見つけるなら、Hitorimeがおすすめです。
1人目ポジション特化の採用マッチングサービスで、エンジニアやCxO、新規事業責任者など重要なポストの人材と効率的に出会えます。募集掲載からスカウト機能まで基本利用料は無料のため、採用活動をコストを抑えながら加速させることができます。


