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近年、多くの企業が導入を進めているリファラル採用。自社の社員から友人や知人を紹介してもらうこの採用手法は、採用コストの削減や企業文化にマッチした人材の確保が期待できる一方で、慎重に進めなければ思わぬトラブルにつながる可能性も秘めています。本記事では、リファラル採用の導入を検討している、あるいはすでに運用に課題を感じている人事担当者の皆様へ向けて、失敗しないために押さえておくべき注意点と、制度を成功に導くための具体的なポイントを網羅的に解説します。
リファラル採用とは?メリットとデメリットを解説

リファラル採用の導入を検討する上で、まずはその基本的な定義と、メリット・デメリットを正しく理解しておくことが重要です。他の採用手法との違いを把握し、自社にとって本当に有効な手段となりうるかを見極めましょう。
そもそもリファラル採用とは
リファラル採用とは、自社の従業員に人材を紹介してもらう採用手法です。社員の個人的なつながりを活用する点が、求人広告や人材紹介サービスとは大きく異なります。紹介はあくまで選考のきっかけであり、その後の選考プロセスを経て合否を判断するのが一般的です。「コネ採用」と混同されがちですが、公平な選考プロセスを経る点で縁故採用とは一線を画します。
リファラル採用のメリット
リファラル採用には、企業にとって多くのメリットが存在します。主なメリットは以下の通りです。
| メリットの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| コスト削減 | 求人広告費や人材紹介会社への成功報酬が不要なため、採用にかかるコストを大幅に抑制できます。 |
| マッチング精度向上 | 紹介者である社員は自社の文化を深く理解しているため、企業に合った人材を紹介してくれる可能性が高く、入社後のミスマッチが起こりにくいです。 |
| 潜在層への接触 | 転職市場には出てきていないものの、良い機会があれば転職を考えている「転職潜在層」へアプローチできます。 |
| 定着率の向上 | 候補者は、紹介者から企業のリアルな情報を事前に得られるため、納得感を持って入社する傾向にあり、早期離職の防止につながります。 |
リファラル採用のデメリット
多くのメリットがある一方で、リファラル採用には注意すべきデメリットも存在します。導入前にリスクを把握しておくことが、後のトラブル回避につながります。
| デメリットの種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 人間関係のトラブル | 紹介した友人が不採用になった場合など、紹介者と被紹介者の関係が悪化するリスクがあります。 |
| 人材の同質化 | 社員が自分と似たタイプの人材を紹介する傾向があるため、組織の多様性が失われる可能性があります。 |
| 採用活動への依存 | リファラル採用に頼りすぎると、採用数が社員の人脈に依存してしまい、安定的な人材確保が難しくなることがあります。 |
リファラル採用でよくあるトラブルと注意点

リファラル採用を成功させるためには、起こりうるトラブルを事前に想定し、対策を講じることが不可欠です。ここでは、特に注意すべき5つのポイントを解説します。
注意点1:人間関係のトラブル
最も頻繁に発生し、かつ深刻な問題となりうるのが人間関係のトラブルです。紹介した友人が不採用になった場合、紹介者と友人の関係が気まずくなる可能性があります。また、採用された後でも「聞いていた話と違う」といった理由で早期退職に至った場合、紹介者との信頼関係に傷がつくこともあります。このような事態は、社員のエンゲージメント低下にもつながりかねません。
注意点2:法的なリスク
リファラル採用のインセンティブ(報酬)制度は、設計を誤ると法律違反になる可能性があります。職業安定法では、厚生労働大臣の許可なく有料の職業紹介事業を行うことを禁止しています。社員へのインセンティブがこれに該当するとみなされた場合、違法となる恐れがあるのです。このリスクを回避するためには、インセンティブを給与や賞与の一部(賃金)として支払い、その旨を就業規則や賃金規程に明記する必要があります。
注意点3:人材の同質化
「類は友を呼ぶ」という言葉通り、社員は自分と経歴や価値観が近い人材を紹介する傾向にあります。その結果、組織内の人材が均質化し、多様性が失われてしまうリスクがあります。組織の硬直化や、新しいアイデアの枯渇につながる可能性があるため、リファラル採用だけに頼らず、他の採用手法と組み合わせることが重要です。
注意点4:制度の不公平感
紹介は社員個人の人脈に依存するため、特定の社員や部署に紹介が偏り、インセンティブが集中することがあります。これにより、他の社員から不公平感や不満の声が上がる可能性があります。全社員が納得できるような、公平で透明性の高い制度設計が求められます
注意点5:紹介が集まらない
「制度を導入したものの、期待していたほど紹介が集まらない」というのもよくある失敗例です。原因としては、社員が自社に魅力を感じていない、制度内容が認知されていない、紹介プロセスが複雑で面倒、といった点が挙げられます。社員の協力なくしては成り立たない採用手法であることを忘れてはいけません。
リファラル採用についてさらに詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。
リファラル採用が難しい理由とは?失敗しないための7つの成功ポイントを解説|Hitorime
【手順別】リファラル採用を成功させるポイント

数々の注意点を乗り越え、リファラル採用を成功させるためには、戦略的な制度設計と丁寧な運用が鍵となります。ここでは、具体的な5つの手順に沿って成功のポイントを解説します。
手順1:目的とルールの明確化
まず、「なぜリファラル採用を行うのか」という目的を明確にし、全社で共有することが大切です。その上で、トラブルを未然に防ぐための詳細なルールを策定します。特に、選考基準は一般の応募者と変わらないこと、そして不採用時の対応フローを明文化しておくことで、紹介者の心理的負担を軽減し、人間関係のトラブルを最小限に抑えることができます。
| ルール項目 | 具体的な設定内容例 |
|---|---|
| 紹介対象者 | 正社員、契約社員など、紹介できる社員の範囲を定める。 |
| 募集ポジション | 紹介を募集している具体的な職種や人物像を明記する。 |
| 選考フロー | 通常の選考プロセスと基準は変わらないことを明記する。 |
| 不採用時の対応 | 誰が、どのように結果を伝えるかを具体的に定める。 |
手順2:魅力的なインセンティブ制度の設計
社員の協力意欲を高めるインセンティブは重要ですが、法的なリスクにも配慮が必要です。報酬は賃金として支払い、金額も社会通念上、相当な範囲(数万円〜数十万円程度が相場)に設定します。また、金銭だけでなく、食事会の費用負担や特別休暇の付与、社内表彰といった非金銭的なインセンティブを組み合わせることも、多くの社員の参加を促す上で効果的です。
参考:新潟雇用労働相談センター(厚生労働省関連)「人材採用の方法「リファラル採用」について」
手順3:全社への協力体制の構築
制度を形骸化させないためには、経営層から積極的に制度導入の目的やビジョンを発信し、全社的な協力体制を築くことが不可欠です。「どのような人材を求めているのか」を具体的に共有することも、紹介の精度を高める上で重要になります。定期的な情報発信や説明会を通じて、制度への理解と共感を深めていきましょう。
手順4:紹介者の負担を軽減する仕組み作り
社員が「気軽に紹介してみよう」と思えるような、シンプルで分かりやすい仕組みを整えましょう。スマートフォンから簡単に応募できる紹介フォームを用意したり、選考の進捗状況を定期的に紹介者へフィードバックしたりする工夫が有効です。「紹介したきり、どうなったか分からない」という状況を防ぐことが、紹介者のモチベーション維持につながります。
手順5:不採用時と採用後の丁寧なフォロー
選考結果にかかわらず、協力してくれた社員への感謝を伝えることを忘れないでください。「今回は残念だったけれど、また良い人がいたらぜひ紹介してほしい」と伝えることが、次の紹介へとつながります。また、採用後も紹介者と被紹介者が孤立しないよう、定期的な面談を設けるなど、会社として円滑な人間関係構築をサポートしていく姿勢が大切です。
リファラル採用を導入している企業の成功事例
ここでは、独自のリファラル採用制度を運用し、成功を収めている企業の事例を紹介します。
株式会社SmartHRの事例
クラウド人事労務ソフトを提供する株式会社SmartHRでは、「いい人紹介ありがとう手当」というインセンティブ制度を設けています。さらにユニークなのが「ごめんねごはん制度」です。これは、紹介した友人が不採用になった場合に、紹介者がその友人を食事に誘う費用を会社が負担するというものです。これにより、不採用時の気まずさを和らげ、社員が安心して友人を紹介できる心理的なセーフティネットを構築しています。
参考:年内に57名の内定がほしいのでとてもピンチです!〜数字でみるSmartHRの採用だより(2020秋)〜|SmartHRオープン社内報|株式会社SmartHR
freee株式会社の事例
クラウド会計ソフトで知られるfreee株式会社では、インセンティブとして金銭ではなく限定Tシャツを贈呈するなど、独自の工夫を凝らしています。また、友人をオフィスに招待してお弁当を一緒に食べる「お弁当制度」を導入し、候補者が気軽に社内の雰囲気を感じられる機会を提供しています。こうした取り組みにより、内定者の約半数がリファラル経由となるなど、大きな成果を上げています。
参考:HRプロ「競争激化のエンジニア採用で大きくV字回復を遂げたfreeeのリファラル採用とは」
スタートアップのリファラル採用についても知りたい方は、下記記事をご覧ください。
スタートアップこそリファラル採用を!成功に導く具体的な手順と注意点を解説|Hitorime
まとめ
リファラル採用は、採用コストの削減やマッチング精度の向上など、多くのメリットを持つ有効な採用手法です。しかしその一方で、人間関係のトラブルや法的なリスクといった注意点も存在します。成功の鍵は、これらのリスクを正しく理解し、それらを回避するための戦略的な制度設計と丁寧な運用を行うことにあります。本記事で紹介したポイントを参考に、自社に合ったリファラル採用制度を構築し、採用活動を成功に導いてください。
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