THE MODEL とは?営業組織の分業モデルを図解で解説
「THE MODEL」という言葉を投資家や採用エージェントから聞いたものの、自分の言葉で説明できないまま、という経営者・人事の方は少なくありません。この記事では、THE MODELの定義と4つの分業フェーズを整理した上で、「フィールドセールスとは何か」「エンタープライズセールスとはどう違うのか」を具体的に解説します。さらに、上位記事ではほとんど触れられていない「1人目営業をどのロールで採用すべきか」という意思決定に直結するチェックリストと採用要件の雛形まで提供します。自社フェーズへの当てはめ方に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
THE MODELとは?30秒でわかる定義と由来
THE MODELとは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部門が連携して売上を最大化するBtoB営業の分業モデルです。Salesforceやマルケト(Marketo日本法人)などで要職を歴任した福田康隆氏が2019年に著書『THE MODEL』(翔泳社)で体系化し、SaaS・サブスクリプション型ビジネスを中心に広く普及しました。

核心は「各部門が担当フェーズのKPIを数値で管理し、プロセスを可視化する」という考え方です。従来型の「1人の営業が新規開拓から受注・フォローまで一気通貫で担う」モデルと比較すると、分業によって各フェーズの精度が上がり、どこにボトルネックがあるかを特定しやすくなります。
THE MODELの4つのプロセスと各部門の役割――フィールドセールスとは何か
THE MODELの4部門は、それぞれ「母数・成功率・ゴール」という数値管理のフレームで動いています。
| 部門 | 主な役割 | 管理する主なKPI |
|---|---|---|
| マーケティング | リード(見込み顧客)の獲得・育成 | MQL数(マーケティング経由の有望リード数)、CPL(リード獲得単価) |
| インサイドセールス | 電話・メール・Web会議で見込み客を商談化 | SQL数(営業が対応する有望案件数)、アポイント獲得率 |
| フィールドセールス | 対面または深度のある商談で受注まで完結 | 受注数、受注率、ACV(年間契約額) |
| カスタマーサクセス | 既存顧客の活用支援・継続・拡大 | NRR(売上継続率)、チャーン率(解約率)、NPS |
インサイドセールスについてはインサイドセールスとは?1人目採用で立ち上げる基礎知識で詳しく解説しています。カスタマーサクセスについてはカスタマーサクセスとは?役割・業務・立ち上げ方を解説も参照ください。
フィールドセールスとは
フィールドセールスとは、対面商談やオンライン会議を通じてインサイドセールスから引き継いだ有望案件(SQL)を受注まで完結させる営業職です。かつては「外勤営業」と呼ばれた職種に近いですが、THE MODELの文脈では「新規開拓の架電はしない」「既存顧客のフォローもしない」という役割の明確な切り分けが特徴です。
フィールドセールスに求められる主なスキルセットは以下のとおりです。
- 複数の意思決定者(担当者・マネージャー・役員など)を巻き込むマルチステークホルダー商談の経験
- 製品デモや提案書作成・価格交渉のハンドリング力
- 受注までのリードタイムを管理するパイプライン管理の習慣
- インサイドセールスへのフィードバック(どんなリードが商談化しやすいか)を言語化できるコミュニケーション力
インサイドセールスとの最大の違いは「商談の深度と所要時間」です。インサイドセールスが短時間の架電で案件を選別するのに対し、フィールドセールスは1商談あたり数週間〜数ヶ月をかけて受注まで導きます。
フィールドセールスの中のエンタープライズセールスとは?――SMBとの違いと難易度

エンタープライズセールスとは、フィールドセールスの一形態で、大企業・複雑商材を対象とする高単価・長期商談に特化した営業スタイルです。フィールドセールスという大きな括りの中に、「SMB(中小企業)向け」と「エンタープライズ(大企業)向け」という2つのサブロールが存在すると理解するのがわかりやすいです。
| 比較軸 | SMBセールス | エンタープライズセールス |
|---|---|---|
| 商談相手 | 担当者〜課長クラスが中心 | 部門長・役員・情報システム部など複数部門 |
| ACV(年間契約額)の目安 | 数十万〜100万円程度 | 数百万〜数千万円以上 |
| 商談期間 | 1〜3ヶ月程度 | 3ヶ月〜1年以上 |
| 求められる動き | テンポよく多数の案件を回す | 少数案件を深く掘り下げ、社内稟議・セキュリティ審査を乗り越える |
| 難易度の特性 | 案件数・スピード管理 | 関係者管理・長期の信頼構築 |
エンタープライズセールスがスタートアップにとって難しいのは、実績・知名度・導入事例が乏しい段階で大企業の厳しい審査を通過しなければならないからです。「1人目でエンタープライズ専任を採用する」場合、候補者に求めるのは「大手SIer・コンサル・SaaS企業での3〜5年以上のエンタープライズ商談経験」と「稟議・セキュリティ審査の通し方を熟知していること」が最低限の要件になります。
THE MODELは全員に当てはまらない――失敗するフェーズと条件
THE MODELはすべてのスタートアップに適用できるわけではありません。分業モデルが機能するのは「各部門に専任を置けるだけのリード量・人員・予算がある段階」が前提です。
分業モデルが機能しにくい典型的な条件は以下のとおりです。
- 月間リード数が50件未満:分業するほどの母数がなく、インサイドセールスが手持ち無沙汰になる
- ARR(年間経常収益)が5,000万円未満の初期フェーズ:各部門に専任を置くコストがROIに見合わない場合が多い
- 商材がまだプロダクトマーケットフィットしていない段階:プロセスを固める前に、創業者自身が顧客と直接対話して仮説検証する方が優先度が高い
この段階では「1人の営業が新規開拓から受注・初期フォローまでを担うフルサイクルセールス(一気通貫型)」の方が現実的です。分業はスケールアップの手段であり、初期フェーズに無理に導入すると「誰がオーナーか分からない」「引き継ぎコストが商談を止める」という本末転倒な事態が起きます。
スタートアップの採用戦略全般についてはスタートアップの採用戦略を徹底解説!成功に導く5つのポイントとは?も参考になります。
【チェックリスト】1人目営業、どのロールで採るべきか?

以下の4問に答えることで、自社が最初に採るべきロールの方向性が絞り込めます。
Q1:商材の年間契約額(ACV)はどのくらいですか?
| ACV帯 | 示唆 |
|---|---|
| 100万円未満 | インサイドセールス中心の型が合う。1人目はISか、IS兼フィールドのハイブリッド |
| 100万〜500万円 | フィールドセールスが必要。SMBメインかエンタープライズかは次のQ2で判断 |
| 500万円超 | エンタープライズセールス専任が必要な可能性が高い |
Q2:現在、月間リードは継続的に獲得できていますか?
- はい(月30件以上)→ リードを商談化するインサイドセールスまたはフィールドセールスが優先
- いいえ(散発的、または月10件未満)→ まずマーケティング強化か、創業者自身が動くフェーズ。採用より先に解決すべき課題がある可能性
Q3:受注後の顧客の解約リスクが今の事業の主要課題ですか?
- はい → カスタマーサクセスを1人目に据えることを検討
- いいえ → 新規獲得フェーズにフォーカスし、フィールドセールスまたはインサイドセールスを優先
Q4:商談の相手は主に中小企業ですか、大企業ですか?
- 中小企業メイン → SMBフィールドセールスまたはIS兼FS型の人材
- 大企業メイン → エンタープライズセールス経験者を最初から採用しないと受注サイクルが機能しないリスクがある
シード期の採用の考え方はシード期の採用を成功させる完全ガイドでも詳しく整理しています。
ロール別・1人目営業の採用要件チェックリスト(雛形)
判定結果をもとに、以下の雛形を自社の採用要件定義の出発点として活用してください。
インサイドセールス(IS)を1人目に採る場合
インサイドセールスを1人目に据える場合、BtoB SaaS・無形商材での架電/メール商談経験とCRM運用スキルが基本要件になります。ただしISはさらにSDR(反響対応型)とBDR(新規開拓型)に分かれ、どちらを先に置くかで求める経験やマインドセットが大きく変わるため、採用要件はロールを決めてから固めるのが定石です。SDR・BDRの違いと1人目営業のロール選定の詳細はBDRとは?SDRとの違いと1人目営業採用の判断基準で、インサイドセールスの定義・KPIの深掘りはインサイドセールスとは?1人目採用で立ち上げる基礎知識で解説しています。
フィールドセールス(FS)を1人目に採る場合
求めるスキル・経験
- BtoB SaaSまたは同等の無形商材での受注経験(インサイドセールスから引き継いだ案件ではなく、自ら商談を完結させた経験)
- パイプライン管理・商談ステージ管理の実務経験
- SMB想定ならば月10〜20件規模の案件並走経験、エンタープライズ想定ならば大手向けの稟議・発注プロセスの経験
求めるマインドセット
- 営業プロセスが整備されていない環境でも自ら型を作れる意欲
- プロダクトの改善点を顧客ヒアリングで吸い上げ、社内にフィードバックできる姿勢
採用要件の言語化については採用基準の決め方とは?失敗しない項目設定と運用時の注意点も参考になります。
カスタマーサクセス(CS)を1人目に採る場合
求めるスキル・経験
- SaaSプロダクトのオンボーディング支援・活用支援の実務経験
- チャーン(解約)の予兆検知・リカバリーの経験
- 顧客データを読んでヘルススコア(顧客の健全度指標)を管理した経験
求めるマインドセット
- 「顧客の成果を自分ごとにできる」コミット力
- CSの型がまだない段階でプレイブックを自ら作れるスタンス
自社フェーズで最初に採るロールが絞り込めたら、次のアクションは「採用要件の確定→求人票の作成→候補者の母集団形成」です。Hitorimeでは1人目採用大全として採用プロセス全体の考え方もまとめていますので、あわせてご参照ください。
まとめ――自社フェーズに合った1人目営業の採用要件を決める
本記事の要点を以下に整理します。
- THE MODELは4部門の分業体制。マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスがそれぞれKPIを持ち、プロセスを可視化することで営業精度を高めるフレームワークです。
- フィールドセールスはSQLを受注まで完結させる役割。インサイドセールスとの最大の違いは「商談の深度と所要時間」であり、その中でもエンタープライズセールスは大企業・高単価案件に特化した高難度ロールです。
- THE MODELはARRが小さく、リード量が少ない初期フェーズには合わない。無理に分業を導入すると引き継ぎコストが商談を止める本末転倒が起きます。
- 1人目に採るロールは「ACV・リード量・解約リスク・ターゲット規模」の4軸で判断できます。本記事のチェックリストを判定の起点として活用してください。
- 採用要件の雛形はロールごとに異なります。スキル・経験・マインドセットを具体的に言語化することが、ミスマッチを防ぐ最初の一歩です。
次に取るべき一歩は、本記事のチェックリスト(Q1〜Q4)に自社の現状を当てはめ、採用するロールを1つに絞り込むことです。ロールが決まれば、上記の採用要件雛形をベースに求人票の草案を作成できます。
Hitorimeは、スタートアップの「1人目人材(最初の重要な採用)」と採用企業をつなぐ転職サービスです。THE MODELのどのロールを最初に採るべきか、採用要件をどう言語化すべきかといった、1人目営業採用ならではの悩みに対して、支援実績に基づく知見で伴走しています。採用要件の整理や候補者探しについてお困りの方は、ぜひHitorime(hitorime.net)にご相談ください。本記事は山下雅弘監修のもと作成しています。








