給与テーブルの作り方|スタートアップが最初に整える報酬設計の手順
「いくら提示すればよいか分からない」「人によって給与がバラバラで説明できない」——1人目採用のオファー設計で、こうした壁にぶつかる経営者は少なくありません。本記事では、給与テーブルの目的定義から等級設計・レンジ算出・運用ルールの文書化まで、スタートアップが今日から動ける手順として一本につないで解説します。市場データの参照方法と典型的な落とし穴、オファー提示前に使えるチェックリストも合わせて提供しますので、制度設計の経験がなくても実務に落とし込めます。
給与テーブルを作る前に決める「目的」と「設計の優先順位」

給与テーブルを作り始める前に、「何のために作るか」を一つに絞ることが最初の判断です。目的によって、最初に設計すべき要素が変わるからです。
スタートアップが給与テーブルを必要とする場面は、主に以下の3つです。
| 目的 | 最初に決めるべき要素 |
|---|---|
| 採用オファーの根拠づくり | 職種・等級の定義と市場レンジ |
| 社員間の不公平感の解消 | 等級の昇降条件と昇給ルール |
| 資金調達時の人件費説明 | 等級別人員計画と総額シミュレーション |
1人目採用フェーズの実態として、ほとんどの場合「採用オファーの根拠づくり」が最初の目的になります。 制度として完成させることよりも、「なぜこの金額を提示するのか」を候補者に説明できる状態にすることが優先です。
一方で、「完璧な制度を作ってからオファーする」という発想は危険です。設計に時間をかけているうちに候補者の温度感が下がり、採用機会を失うケースは実際によく起きます。まず最小限の枠組みを作り、運用しながら精緻化するという順序が現実的です。
ステップ1|等級(グレード)の数と定義を決める

等級設計で最初に決めるのは「そもそも等級を作るか」、次に「何段階にするか」です。人数規模別の目安は次のとおりです。
| 従業員数の目安 | 給与レンジの持ち方 | 考え方 |
|---|---|---|
| 〜10名 | 等級制度は作らず、ジュニア/ミドル/シニアの3区分のレンジだけ決める | 評価制度がなくても、説明できるレンジさえあればオファーは出せる |
| 10〜50名 | 3〜4段階のグレード | 評価サイクルと連動させ、昇格の基準を言語化していく段階 |
| 50名超 | 5〜8等級(職務等級制度へ) | 職種別・職系別の分岐が必要になる段階 |
この目安は、等級数が増えるほど定義文の整合性維持と運用工数が増える、という制度設計上の一般的な考え方に基づくもので、絶対的な基準ではありません。重要なのは、「今の人数と今後2〜3年で想定する人数に対して運用できるか」という観点で決めることです。
1人目採用の段階では、多くの場合いちばん上の行に当てはまります。等級制度そのものを作る必要はなく、3区分のレンジを決めて説明できれば十分です。 評価制度と等級を人数フェーズごとにどう厚くしていくかはエンジニア評価制度の作り方と運用のポイントで段階別に整理していますので、先の段階の見通しを持ちたい場合はあわせてご覧ください。
等級定義文の書き方
等級ごとに定義文を作る際は、次の3軸を使うと書きやすくなります。
- 役割:何を担うポジションか(例:施策の実行担当、チームの方針決定担当)
- 期待アウトプット:どのような成果を出すことが求められるか(例:担当領域のKPIを自走して達成する)
- 自律度:どの程度、指示なく動けるか(例:上位者の確認なく判断・実行できる範囲)
定義文は長くする必要はありません。箇条書き3〜5行程度で、経営者が口頭で説明できる粒度が適切です。
ステップ2|市場データを参照して給与レンジを算出する

給与レンジ(各等級における給与の上限・下限)は、市場データに基づいて設計するのが基本です。感覚や予算都合だけで決めると、採用後に「相場よりも低かった」「前職より下がってもらうことになった」といった問題が発生しやすくなります。
無料で使える市場データソース
以下の3つは費用をかけずに参照できます。
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」:職種別・企業規模別・経験年数別の賃金が毎年公表されています(データ本体はe-Statから取得します)。参照時の注意は3点です。
- 公表の主体は平均値です。 中央値(中位数)や分位数が載るのは「分布特性値」の表に限られ、そこには経験年数の軸がありません。逆に経験年数階級別の表は平均値のみです。分布を見たいときは「職種×企業規模の分布特性値」、経験年数で見たいときは「職種×経験年数の平均値」と、表を使い分けてください。
- 職種名は日本標準職業分類ベースの正式名称です。 「ソフトウェア開発」「営業職」では該当項目が見つかりません。エンジニアなら「ソフトウェア作成者」「システムコンサルタント・設計者」、営業なら「自動車営業職業従事者」「金融営業職業従事者」など、実際の分類名で探します。
- そのままでは年収として使えません。 「所定内給与額」は6月分の月額で、残業代を差し引いた額です。賞与は「年間賞与その他特別給与額」という別項目のため、年収相当に直すには 年収相当 = 所定内給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額 の換算が必要です。たとえば所定内給与額が月38万円、年間賞与が90万円なら年収相当は546万円になります。月額だけを見て水準を決めると、賞与のない自社の年収提示が相場を大きく下回ります。
- Indeed・求人ボックスなどの求人メディア:Indeedの「給与検索」や求人ボックスの「給料ナビ」で、職種別・地域別の平均給与と給与分布を確認できます。実際に募集されている求人が反映されるため、統計調査より現在の実勢に近い水準を把握できます。ただし注意が3点あります。(1)経験年数での絞り込みはできません。 表示されるのは経験年数を問わない全体平均のため、ミドル層を採用したい場合はこの数値をそのまま基準にすると水準が低くなります。経験年数別の分布は賃金構造基本統計調査で確認してください。(2)表示値は掲載求人の単純集計ではなく、ユーザーや採用企業からの申告情報・政府統計を組み合わせた推定値です。(3)通常の求人一覧ページではなく、給与専用のページから確認します。
- 業界特化の転職サービスが公開している年収データ:職種別・レイヤー別の年収分布を公開している場合があります。ただし各社が自社の登録者から集計したものなので、母集団に偏りがある前提で、上記2つの補助として使ってください。
データの参照手順と落とし穴
市場データは「職種 × 経験年数 × 地域」の3軸で見たいところですが、この3軸を同時に満たす公表データは存在しません。 賃金構造基本統計調査の職種別の表は全国集計のみで、職種と都道府県のクロス集計は公表されていません。求人メディア側は地域で絞れますが経験年数では絞れません。したがって実務では、職種×経験年数を統計で、地域差を職種を問わない都道府県別データで、それぞれ別々に確認して重ね合わせることになります。
典型的な落とし穴として最も多いのは、東京都内のIT職種の相場をそのまま地方拠点や全国リモートポジションに適用してしまうケースです。地域・生活コストの差は無視できないため、勤務地が東京以外であれば地域別の統計も必ず確認してください。
また、スタートアップの1人目採用では「経験年数5〜8年のミドル層」を想定しているのに、全経験年数平均の数値を見て低い水準に設定してしまうことも起きやすいミスです。求人メディアの平均給与は経験年数を問わない全体値なので、ここを基準にすると特に起こりやすくなります。採用したい経験年数層の水準は、統計側の経験年数階級別の表で必ず確認してください。
なお、賃金構造基本統計調査の企業規模区分は最小が「10〜99人」です。数名規模のスタートアップの相場そのものは、この統計からは読み取れません。1人目採用では「10〜99人」の値を上限側の参考として置き、そこから自社の資金余力と、後述する人件費総額で逆算するという使い方になります。
レンジ幅(レンジスプレッド)の設定方法
各等級の給与レンジは「ミッドポイント(市場水準の目安)」を基準に、上限と下限を設定します。報酬実務では、レンジの幅を レンジスプレッド =(上限 − 下限)÷ 下限 × 100 で表すのが一般的です(上限が下限の1.5倍なら、レンジスプレッドは50%になります)。
階層別の目安としては、定型・オペレーション職で40%程度、専門職・管理職で40〜60%程度、経営層で50%以上とされることが多く、上位等級ほど幅を広く取るのが基本の考え方です。ただしこれは日本の公的統計に基づく数値ではなく、米国の報酬設計慣行に由来する参考値です。
さらに、これらの目安は1等級に複数人が在籍する規模の企業を前提としています。1等級1人という1人目採用の段階では、幅の精緻さにほとんど意味がありません。 それよりも「採用したい層(例:経験5〜8年のミドル層)の市場レンジを実際に確認し、その範囲を自社の下限・上限として候補者に説明できること」が優先です。幅を狭く取りすぎると、有力な候補者に対して「レンジ上限を超えるため提示できない」という、自分で作った制約に縛られる事態を招きます。
サンプルと記入テンプレート
3区分でレンジだけを決める場合の記入例です(職種はソフトウェアエンジニア、勤務地は東京、金額は年収の額面を想定)。
| 区分 | 想定する経験 | 下限 | ミッドポイント | 上限 | レンジスプレッド |
|---|---|---|---|---|---|
| シニア | 8年以上/技術選定と設計を主導できる | 900万円 | 1,080万円 | 1,300万円 | 44% |
| ミドル | 4〜8年/担当領域を独力で完結できる | 640万円 | 770万円 | 900万円 | 41% |
| ジュニア | 〜3年/レビュー前提で実装できる | 480万円 | 550万円 | 620万円 | 29% |
この金額はあくまで表の埋め方を示すための例です。 職種・勤務地・調達フェーズによって大きく変わるため、必ずステップ2の手順で自社の数値に置き換えてください(上記はエンジニア評価制度の作り方と運用のポイントで示している月額の報酬バンドと同水準に揃えた例です)。
自社用には次の表を埋めます。
| 区分 | 想定する経験 | 下限 | ミッドポイント | 上限 | レンジスプレッド |
|---|---|---|---|---|---|
| シニア | |||||
| ミドル | |||||
| ジュニア |
埋める前に、金額が「何を指すか」を先に決めてください。 ここが曖昧なままオファーに進むと、条件交渉の場でもっとも揉めます。決めるべきは次の3点です。
- 年収か月給か:候補者は年収で比較するため、テーブルは年収で持ち、雇用契約書で月額に割り戻すのが実務的です
- 賞与を含むか:含むなら「年収=月額×12+賞与」の内訳を明示します。賞与制度がないなら、その前提で月額を上げて年収を揃える必要があります
- 固定残業代を含むか:含む場合は「年収650万円(うち固定残業代 月4万円・30時間分を含む)」のように、必ず時間数とセットで表記します
ステップ3|昇給・降給ルールと運用の基本を文書化する

給与テーブルは「一度作ったら変えられないもの」ではありません。むしろ、スタートアップでは事業フェーズに合わせて年1〜2回の見直しを前提にしながら、「今この時点で運用できるルール」を文書化することが重要です。
昇給ルールの最低限の設計
- 昇給タイミング:年1回(評価サイクルと連動させるのが運用しやすい)を基本とし、期中昇給のルールも設けるか否かを明記する
- 昇給幅の根拠:シンプルな設計なら「前年度の評価結果に応じて、その区分の上限・下限の範囲内で決定する」と定めるだけで機能します。1人目採用の段階では号俸(等級内の細かい刻み)を作らないことを勧めます。 号俸が要るのは同一等級に複数人が並び、昇給額の説明責任が発生してからです。作るとしても、レンジ幅を5〜10等分し、1ステップを年収10〜20万円程度に置くのが扱いやすい水準です
- 区分が上がるときの給与の扱い:昇格すると、現在の給与が新しい区分の下限を下回ることがあります。先ほどのサンプルなら、ミドルで年収770万円の人がシニアに上がると、シニアの下限は900万円なので130万円の引き上げが必要になります。この場合は最低でも新区分の下限まで引き上げるのが原則です。引き上げ幅が大きくなる場合に一度で合わせるのか、期を分けて段階的に埋めるのかを先に決めておくと、後のトラブルを防げます
降給・降格の条件
降給が発生し得る条件(等級降格、役割変更など)は、従業員数にかかわらず、就業規則または雇用契約書にあらかじめ明記しておく必要があります。裁判例(アーク証券事件・東京地裁決定 平成8年12月11日)では、等級の引き下げによる降給は使用者に当然に認められるものではなく、就業規則等に「引き下げがあり得る」旨の根拠規定がなければ無効と判断されています。従業員が3人でも10人でも同じです。
これとは別に、労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署長に届け出る義務が生じます(パート・アルバイト・契約社員も人数に含まれます)。ただし同条が必要記載事項として挙げているのは「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」であり、降給は条文上の必要記載事項ではありません。つまり降給ルールの明文化は、届出義務としてではなく、降給を実際に行えるようにするための契約上の根拠として必要になります。10人未満で就業規則がない段階でも、雇用契約書に根拠条項を置いてください(厚生労働省のモデル就業規則が雛形として使えますが、降給条項は含まれていないため自社で追加が必要です)。
試用期間中の給与
試用期間中の給与を本採用より低く設定すること自体は、法律上禁止されていません。ただし2点を押さえてください。
1. 労働条件の明示は雇用契約書・労働条件通知書で行う(人数を問わず義務)
労働基準法第15条により、労働契約の締結時に賃金などの労働条件を明示する義務があり、賃金の決定・計算・支払方法は書面交付による明示が必要です(労働基準法施行規則第5条)。これは従業員数にかかわらず全事業場に課されます。試用期間の有無・長さ・その間の給与額は、必ず雇用契約書または労働条件通知書に明記してください。10人未満で就業規則がない段階でも、雇用契約書に書いてあれば有効です。
2. 最低賃金を下回ることは原則としてできない
最低賃金法第4条により、最低賃金額に満たない賃金の定めは無効になります。なお同法第7条第2号には「試の使用期間中の者」を対象とした減額の特例(都道府県労働局長の許可を条件に、減額率20%が上限)がありますが、許可要件は「本採用労働者の賃金水準が最低賃金額と同程度であること」等であり、市場相場でミドル〜シニア人材を採用する一般的な1人目採用ではまず該当しません。実務上は「試用期間中も最低賃金以上」を前提に設計してください。
最低賃金額は都道府県ごとに定められ、実態として毎年見直されます。ただし改定額の発効日は都道府県によって異なり、数か月の幅があります(令和7年度の改定は10月から翌年3月にかけて順次発効しました)。また、特定の産業には地域別最低賃金より高い「特定(産業別)最低賃金」が設定されている場合があります。自社の勤務地の最新額と発効日は、厚生労働省の地域別最低賃金の全国一覧で確認してください。
採用計画全体(人員計画・採用チャネル設計・コスト管理)との接続については、採用計画の立て方|手順・テンプレ・チェックリストで詳しく解説しています。
1人目採用オファー提示前の確認チェックリスト
設計した給与テーブルを実際のオファーに使う前に、以下の項目を確認してください。すべてにチェックが入る状態が、オファー提示の最低ラインです。
| # | 確認項目 | チェック |
|---|---|---|
| 1 | オファーする区分の定義文が文書化されている | □ |
| 2 | 該当区分の給与レンジ(上限・下限)が決まっている | □ |
| 3 | 提示する給与額が市場データと照合済みである | □ |
| 4 | 提示額が年収か月給か、賞与・固定残業代を含むかが明確になっている | □ |
| 5 | 昇給のタイミングと決定プロセスを口頭で説明できる | □ |
| 6 | 試用期間の有無・長さ・その間の給与が雇用契約書に記載されている | □ |
| 7 | 通勤手当・リモートワーク手当・副業の可否が明確になっている | □ |
| 8 | ストックオプションを提示する場合、行使条件・株数・価格が確定している | □ |
| 9 | オファーレター(内定通知書)に上記の条件が全て記載されている | □ |
なお、ストックオプションは給与テーブルとは切り離して設計する論点です。付与数・行使価額・ベスティング条件はストックオプション設計の基本と実務手順で解説していますので、現金報酬のレンジを決めたあとに確認してください。
1人目採用では、制度の完成度よりも「説明できるかどうか」が候補者の信頼に直結します。 候補者は給与の金額だけでなく、「この会社は自分の処遇をどう考えているか」を経営者の言葉から判断しています。チェックリストの各項目を面談の場で自信を持って話せる状態にしておくことが、内定承諾率を上げる採用設計の実践ガイドで解説しているオファー承諾率の向上に直結します。
オファー面談とは?目的・進め方・成功のコツを解説では、オファー提示の場での伝え方・交渉の進め方を詳しく解説していますので、チェックリストと合わせて活用してください。
よくある設計ミスと、最初に整えるべき最小構成
スタートアップに多い設計ミス3パターン
1. 精緻に作りすぎて運用できない
10段階の等級・複数職種別テーブル・詳細な号俸表を一気に作ったものの、評価を行う仕組みや運用するための工数が不足し、机上の制度になってしまうケースです。初期は「シンプルで説明できる制度」を優先してください。
2. 市場相場を見ずに感覚で決めた
創業メンバーの前職給与を基準にしたり、「うちのフェーズならこのくらいでよい」と思い込んで設定した結果、求めるレベルの候補者に断られ続けるケースです。必ず外部データと照合する手順を踏んでください。
3. 等級定義がなく給与テーブルだけ作った
レンジの表だけ作成し、「なぜこの等級か」の説明ができない状態でオファーしてしまうと、候補者から「交渉次第で変わるのでは」と思われ、制度への信頼が生まれません。等級定義と給与テーブルは必ずセットで整備してください。
補足:テーブルから人件費の総額を出す
作った給与テーブルは、そのまま資金計画の材料になります。ただし額面年収の合計=人件費ではありません。 社会保険料の会社負担分(厚生年金9.15%、健康保険約5%、これに雇用保険・労災保険・子ども子育て拠出金を加えて、おおむね給与の15〜16%)を上乗せする必要があります。
たとえば1年後の想定人員を「シニア(ミッドポイント1,080万円)1名、ミドル(同770万円)2名」とすると、次のようになります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 額面年収の合計 | 1,080万円 + 770万円 × 2 | 2,620万円 |
| 社会保険料の会社負担(15%として) | 2,620万円 × 15% | 約393万円 |
| 人件費総額 | 約3,013万円 |
ここに採用費を加えたものが、調達時に説明すべき採用関連コストです。人材紹介経由なら決定年収の30〜35%が目安なので(人材紹介の手数料相場を徹底解説|採用手法別コスト比較で内訳を解説しています)、上の例でシニア1名を人材紹介で採用するなら、1,080万円 × 30% = 約324万円が初年度に別途かかります。
1人目採用では、この「額面の約1.15倍 + 採用費」が資金繰りに直接効いてきます。 手元資金と調達計画から払える上限を先に決め、それを超える提示はしないという順序で考えると、レンジの上限が現実的な水準に収まります。なお実際の料率は、健康保険の都道府県別料率や業種別の労災保険率によって変わります。確定値は社会保険労務士に確認してください。
最初に整えるべき最小構成
以下が、1人目採用を前に整えるべき給与テーブルの最小構成です。
- 区分:ジュニア/ミドル/シニアの3区分(必要に応じてマネジャーを追加)。等級制度そのものは作らない
- 各区分の定義文:役割・期待アウトプット・自律度の3軸で箇条書き3〜5行
- 給与レンジ:区分ごとに下限・ミッドポイント・上限を設定(市場データに基づいて算出)
- 金額の定義:年収か月給か、賞与・固定残業代を含むかを明記
- 昇給タイミング:年1回(評価サイクルと連動)を明記
- 雇用契約書への反映:賃金の決定・計算・支払方法、試用期間、降給の根拠条項を記載
この5要素が揃えば、候補者への説明と社内での合意形成は十分に機能します。制度の精緻化は、採用が進み組織規模が拡大する段階で段階的に行えばよいのです。
まとめ
- 目的を先に決める:採用オファーの根拠づくり・不公平感の解消・資金調達対応のうち、今の優先目的に合わせて設計の順序が変わる
- 10名以下なら等級制度は作らない:ジュニア/ミドル/シニアの3区分のレンジだけ決めれば、オファーは出せる。定義文は役割・期待アウトプット・自律度の3軸で簡潔に書く
- 市場データはソースごとに見える軸が違う:職種×経験年数は賃金構造基本統計調査(平均値・月額)、地域と実勢は求人メディア(経験年数では絞れない)。3軸すべてを同時に満たすデータは存在しない
- 金額の定義を先に決める:年収か月給か、賞与・固定残業代を含むかを決めずにオファーへ進むと、条件交渉で必ず揉める
- 運用ルールをセットで文書化する:昇給タイミング・降給の根拠条項・試用期間中の扱いを、人数にかかわらず雇用契約書に記載する
- 額面の1.15倍で資金計画を見る:社会保険料の会社負担分と採用費を乗せた総額が、実際に必要な現金
次の一歩として、まず自社が採用したい層(職種と経験年数)の市場レンジを1時間かけて調べ、この記事のテンプレートの3行を埋めることから始めてください。定義文の作成も、ステップ1の3軸(役割・期待アウトプット・自律度)を使えば同じ日のうちにたたき台が作れます。
Hitorimeは、スタートアップの1人目人材(最初の重要な採用)と採用企業をつなぐ転職サービスです。1人目採用の要件定義から候補者とのマッチングまで、1人目採用ならではの難しさに伴走しています。「自社の状況に合った採用から一緒に考えたい」という方は、ぜひHitorime(hitorime.net)をご覧ください。本記事は山下雅弘監修のもと作成しています。








